2025年5月に成立した改正労働安全衛生法により、これまで努力義務だった従業員50人未満の事業場でも、ストレスチェックの実施が義務になります。2026年5月の労働政策審議会(安全衛生分科会)で、施行日は2028年4月1日とする案が示されました。
50人以上の事業場は2015年から義務のため、実施規程や手順が整っているところが多いはずです。一方、50人未満の事業場は、これから初めて体制を作ることになります。本記事では、ストレスチェックの実施規程に定める項目と条文例、小規模事業場の準備を整理します。メンタルヘルス対策全体の規程は「メンタルヘルス対策規程の作り方」をご覧ください。
改正の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 労働安全衛生法 第66条の10 |
| 改正 | 2025年5月成立 |
| 対象の拡大 | 従業員50人未満の事業場も実施が義務に |
| 施行 | 2028年4月1日の見通し |
| 報告 | 50人未満の事業場は、労働基準監督署への実施報告は不要とされる見込み |
厚生労働省は2026年2月に、50人未満の事業場向けの実施マニュアルを公表しています。
ストレスチェックの流れ
- 実施計画を決める(時期、方法、実施者、対象者)
- 労働者に調査票に回答してもらう(年1回以上)
- 実施者が結果を評価し、本人に直接通知する
- 高ストレスと判定された人が申し出た場合、医師による面接指導を行う
- 医師の意見を聴き、必要に応じて就業上の措置(業務の軽減、配置の変更など)をとる
- 記録を保存する
- 集団ごとの分析を行い、職場環境の改善に使う(努力義務)
実施規程に定める項目
1. 目的と対象者
- メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)が目的であることを明記する
- 対象者(期間の定めのない労働者、一定の条件を満たす有期契約・パートタイムの労働者など)
2. 実施体制
- 実施者:医師、保健師、または所定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師
- 実施事務従事者:調査票の回収やデータの入力を行う者
- 解雇・昇進・異動などの人事権を持つ者は、実施の事務に従事できないことを明記する
50人未満の事業場は産業医の選任義務がないため、外部の機関に委託する形が現実的です。委託先と、委託する範囲を規程に書きます。
3. 実施の時期と方法
- 実施の時期(例:毎年10月)と頻度(年1回以上)
- 調査票(国が推奨する57項目の調査票など)
- 回答の方法(紙・Web)
4. 結果の通知と、事業者への提供
- 結果は実施者から本人に直接通知する
- 事業者が個人の結果を受け取るには、本人の同意が必要。同意の取り方(結果の通知後に個別に取る)を定める
5. 面接指導
- 高ストレス者が医師による面接指導を申し出る方法と窓口
- 申し出から面接指導までの期間(おおむね1か月以内)
- 医師の意見を聴き、就業上の措置を決める手順
6. 記録の保存と情報の管理
- 結果の記録を5年間保存する(本人の同意がない場合は、実施者などが保存)
- 結果を扱える者の範囲と、守秘義務
7. 不利益取扱いの禁止
- 受検しないこと、面接指導を申し出たこと、結果の提供に同意しないことを理由に、不利益な取扱いをしないことを明記する
条文例(ひな形)
(実施体制)
第◯条 ストレスチェックの実施者は、会社が委託する外部機関の医師または保健師とする。 2 ストレスチェックの実施事務には、従業員の解雇、昇進または異動に関して直接の権限を持つ者を従事させない。
(結果の通知)
第◯条 ストレスチェックの結果は、実施者から受検者本人に直接通知する。会社は、本人の同意を得た場合に限り、実施者から当該本人の結果の提供を受けるものとする。
(面接指導)
第◯条 実施者が面接指導の対象と判断した従業員は、結果の通知を受けた日からおおむね1か月以内に、会社に面接指導を申し出ることができる。会社は、申出があったときは、遅滞なく医師による面接指導を実施する。
(不利益取扱いの禁止)
第◯条 会社は、従業員がストレスチェックを受検しないこと、面接指導を申し出たこと、または結果の提供に同意しないことを理由として、不利益な取扱いを行わない。
50人未満の事業場の準備
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2027年 | 委託先(外部機関)の比較と選定、費用の見積り |
| 2027年後半 | 実施規程の作成、労働者への説明と意見の聴取 |
| 2028年1〜3月 | 実施計画の確定、規程の周知 |
| 2028年4月以降 | 最初のストレスチェックを実施 |
50人以上の事業場には衛生委員会での審議が求められますが、50人未満の事業場には衛生委員会がないため、労働者の意見を聴く機会(朝礼・会議・アンケートなど)を設けて進めます。
ありがちな失敗
1. 人事担当者が結果を見てしまう
人事権を持つ者が実施の事務に関わったり、本人の同意なく結果を見たりすると、制度への信頼が失われ、受検率が下がります。結果を扱える者の範囲を規程で決めておきます。
2. 面接指導の窓口がない
高ストレスと判定されても、どこに申し出ればよいかが分からなければ、面接指導につながりません。申し出の方法を結果の通知と一緒に案内します。
3. 実施して終わり
集団分析は努力義務ですが、結果を職場環境の改善に使わなければ、実施の手間に見合う効果が出ません。
規程ログでの整備
規程ログには、ストレスチェック実施マニュアルとメンタルヘルス対策規程のテンプレートがあります。AI 法令レビューは e-Gov から労働安全衛生法を取り込み、改正があれば自社の規程と照らして条文ごとに指摘します。公開した規程は、従業員ごとの閲覧の記録が残るため、制度を周知したことを示せます。
まとめ
ストレスチェックは、2028年4月から従業員50人未満の事業場でも義務になる見通しです。実施者を外部に委託する、人事権を持つ者を事務から外す、本人の同意なく結果を見ない、面接指導の窓口を決める。この4点を実施規程に書き、施行までに準備を進めましょう。
※ 本記事は2026年10月時点の公開情報をもとにした一般的な情報整理です。施行日や省令・指針の内容は、今後の公布で確定します。最新の情報を確認し、具体的な運用は産業医・社労士への相談を推奨します。
