時間外労働・休日労働をさせるには、36協定(労基法36条に基づく労使協定)を締結し、様式第9号(特別条項付きは第9号の2)で労働基準監督署に届け出る必要があります。書式自体は1〜2枚ですが、2019年4月施行の現行様式には記入漏れがあると受理されない欄がいくつかあり、実務では差し戻しが珍しくありません。
本記事では、労基署で差し戻される典型ポイントを5つに絞って解説します。
前提:様式第9号と第9号の2の使い分け
| 様式 | 使う場面 |
|---|---|
| 様式第9号 | 一般条項のみ(月45時間・年360時間の限度内) |
| 様式第9号の2 | 特別条項付き(臨時的に限度時間を超える場合) |
特別条項を付ける場合は2枚構成になり、限度時間を超える場合の手続・健康確保措置の記載が追加で必要です。
ポイント1:チェックボックス2つの入れ忘れ
現行様式で最も多い差し戻しが、チェックボックスの入れ忘れです。
- 「時間外労働及び休日労働を合算した時間数は、1箇月について100時間未満でなければならず、かつ2箇月から6箇月までを平均して80時間を超過しないこと」への同意チェック
- 労働者代表が「管理監督者でないこと」「使用者の意向に基づき選出された者でないこと」のチェック
1つ目は2019年の上限規制法制化で追加された欄で、チェックがないと協定自体が無効と扱われます。電子申請でも紙でも必須です。
ポイント2:「具体的事由」が抽象的
「業務の都合上必要なとき」「繁忙のため」のような抽象的な記載は差し戻し対象です。業務の種類ごとに、臨時性がわかる具体的な事由を書きます。
| NG例 | OK例 |
|---|---|
| 業務多忙のため | 月末の受注集中により出荷業務が所定時間内に完了しないため |
| 決算対応 | 四半期決算時の経理処理・監査対応のため |
| 納期対応 | 顧客都合による納期前倒しへの臨時対応のため |
ポイント3:1年の限度時間の「起算日」
年360時間(特別条項なら年720時間)の上限は「1年」で数えますが、その起算日を様式に明記する必要があります。有効期間の開始日と揃えるのが一般的ですが、期中で締結し直す場合は前協定の起算日を引き継ぐか整理が必要です。
ポイント4:休日労働欄の書き漏れ
様式第9号は「時間外労働」と「休日労働」を1枚で扱います。休日労働をさせる可能性があるなら、労働させることができる法定休日の日数(例:1か月に2日)と始業・終業時刻(例:8:30〜17:30)を記入します。時間外の表だけ埋めて休日欄が空欄、というケースが典型的な書き漏れです。
ポイント5:労働者代表の選出手続
過半数労働組合がない場合は過半数代表者と締結しますが、代表者は:
- 管理監督者でないこと
- 投票・挙手など民主的な方法で選出されていること
- 使用者の指名や意向に基づく選出でないこと(2019年の労基則改正で明確化)
を満たす必要があります。「社長が総務部長を指名」は典型的な無効パターンで、この場合協定自体が無効=上限規制違反(罰則対象)になり得ます。
まとめ:毎年の更新こそ仕組みで
36協定は有効期間(通常1年)ごとに、締結→届出をやり直す年次イベントです。前年の控えを探して転記する運用は、様式改正やチェック漏れの温床になります。
規程ログでは、36協定・特別条項の作成から労働者代表の意見聴取、様式第9号の法定記載事項(チェックボックス・具体的事由・起算日・休日労働)を織り込んだ書類出力、翌年分のワンクリック複製までを Web で完結できます。社労士事務所向けには、顧問先の協定をまとめて管理できるダッシュボードも提供しています。
